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浦和地方裁判所 昭和57年(ワ)1118号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

請求原因事実はすべて当事者間に争いがないので、被告主張の抗弁について判断すると、<証拠>によれば、被告の代表者大橋はその主張のとおり国分秀雄から本件貸借家屋を貸借して被告会社にこれを使用させ、被告会社がこゝで鉄工業を営んでいるものであるが、被告会社はその営業上の必要からその賃借当初から本件賃借家屋の敷地と地続きの本件土地を何らの契約関係もないまゝ所有者であるたけの黙認の下に材料置場、駐車場等として事実上無償使用してきたところ、昭和五四年に至りたけから弁護士を通じて正式に契約を締結した上で使用してほしい旨申入れがあつたため、被告代表者大橋もこれに応じて本件賃貸借契約を締結したこと、ところで本件土地は、被告がその使用を始める前はひどい湿地でどうにもならないような土地であつたが、被告において相当額の費用をかけて土を入れたり、排水設備を作るなどしてようやく現状のような土地に仕上げたものであつたうえ、当時被告はたけの承諾の下に更にその上に数百万円の費用をかけてその営業に使用するクレーンの設置を予定していたため、たけに対し相当長期間の本件土地の使用を申入れたところ、たけもこれに応じ、本件賃貸借契約書(甲第二号証)に「クレーンの設置を認める」旨明記するとともに、貸借期間は一応一年間(地代据置期間を三年)とするが、当事者が特に反対の意思を表明しない限り自働的に毎年更新される旨の合意がなされていることが認められ、原告本人尋問の結果中これに反する部分はたやすく信用できず、そして他にこの認定を左右するに足る証拠はない。

なお原告は、当時本件賃借家屋の敷地の所有者である栗原正雄が同家屋の収去、同敷地の明渡を求めて提起した訴訟が当裁判所に係属中であり(昭和五四年(ワ)第一八三号)、たけは被告に本件土地を右訴訟が終了するまでの間賃貸したにすぎない旨主張するところ、なるほど当時これが訴訟が当裁判所に係属中であつたことは当裁判所に顕著な事実であるが、本件賃貸借契約の締結に当たつてたけの側は弁護士が関与しながら、本件賃貸借契約書には原告主張のような本件賃貸借契約の存続期間についての記載がないことからするとこのような主張は到底信用するに値しない。

そして前記認定事実からすると本件賃貸借契約は形式的には一年という期間の定めはあるものの当然相当期間にわたつて更新が予定されているから実質的には存続期間の定めのない契約と同視すべきであり、そして一般に期間の定めのない賃貸借については使用貸借の場合と同様契約に定めた目的に従い使用収益をなすのに必要な期間は賃借人において賃借物を使用収益できるものというべきところ、本件賃貸借契約にあつては、賃借人である被告において本件土地上に資材や自動車をおくほかクレーンを設置することを予定し、実際にも今日まで被告においてそのための敷地として本件土地を使用してきたから、被告において本件土地にクレーンを設置する必要が存する限りは本件土地の賃貸借契約は終了しないものというべきであり、そしてまた被告代表者大橋の本件賃借家屋についての賃借権が存続し、同家屋において被告がさきの営業を継続しうる限りは右の必要が存するものというべきである。

ところで本件賃借家屋についての被告代表者大橋の賃借権が消滅したことについては原告において何らの主張立証もしないから被告の本件土地についての賃借権は未だ消滅していないものというべきであり、従つてこれが消滅したことを前提とする原告の本訴請求は失当というべきであるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(松井賢徳)

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